ユカログ

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25歳・Travel Writer

【女一人】イラン1ヶ月の旅・シーラーズ編③【旅行記】

こんにちは、ユカです。

 

 女一人でのイラン旅行記・シーラーズ編その3です。

 

その2はこちらから。

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2016.2.21 シーラーズ

コンビニのやたら優しい老爺 

昨日寝坊して行けなかったピンクモスクに、今日こそは早起きして行こうと思ったけれど決意が軽かったのか疲労が溜まっていたのか、起きると11時。

ピンクモスクは、訪れるベストな時間帯が朝なだけで、1日中開いている。ならばもう午後に行くことにしよう、と思いゆっくりと支度をする。2日連続で決意虚しく寝坊したのだ。明日起きれる保証がない。

スカーフを頭に巻き、適当にご飯を食べようと、外に出る。

ホテルを出て少し歩くと道路沿いに小さなコンビニやスーパーがちらほら見える。

やたら大きなアイスクリームの看板が目についた。お腹はそんなに空いていない。朝食はアイスでいいやと思いフラフラと店のドアを開けた。

猿のように背中の曲がった、くたびれた水色のシャツを着た、線の細い老人がレジカウンターの向こうで椅子に座りながらこちらを見上げる。

 

「グッモーニン、サラーム、サラーム」

 

シーラーズではテヘランよりも外国人が珍しいようだ。熱烈な歓迎にも慣れてしまいそうになる。

彼は嬉しそうに椅子から立ち上がり、しゃがれた声で話しかけてくれる。カウンター越しに手を伸ばし、握手を求められる。

握り返したその手はまさに老人のもので、力があまり入らないようだった。

 

「グッモーニン、アイスある?」

 

彼はニコニコと笑い、数個しか中身がないスカスカのショーケースを見せてくれた。

適当にチョコレートのアイスと水を選び、レジへ持って行く。

お金を払おうとすると彼はノー、と言いアイスをその場で開けてしまった。

 包装紙を床に捨て、アイスを押し付けるように私に渡す。

 

「え?お金払うよ」

 

「いいんだ、ゲストだから」

 

イラン人の外国人に対する優しさには慣れたつもりだったけれど、店のものを無料で渡してもらったのは初めてだ。

でも80円程度だ。甘えてもいいのかなと思い、彼に勧められるまま椅子に座る。

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ここで食べたのとは違うけれど、イランのアイス

 

彼はこちらに興味津々のようだった。

どこから来たか、家族はいるのか、結婚しているのか。

なぜ1人で旅行するのか、なぜイランを選んだのか、なぜシーラーズに降り立ったのか。

イラン人の老爺らしく、あまり英語は流暢でない。けれどゆっくりと英語を検索しながら、様々な質問を投げかける。私の回答をきちんと理解しているのかいないのかはわからないが、満足気に話を聞いてくれる。

 

彼の家族の話にもなった。

美しい妻がいて、娘が2人いるんだ、と言いながら娘の写真を見せてくれる。ガラケーで撮られたそれはあまり顔がはっきりしなかったが、綺麗だね、と感想を述べる。

それを聞いて彼は幸せそうに頷いた。いいお父さんなんだな、と思った。

 

ひとしきり話し終え、立ち上がろうとする私を手で制し、彼は店をぐるっと周り売り物のジュースやチョコレートを棚から取り出す。

それを押し付けるように私に渡す。プレゼントだ、と彼は言う。

いい、いらないと答えるが、食え、というように渡してくる。

カオナシがセンにお金を渡すところが想起された。

 

「ごめん、荷物になるしチョコレート好きじゃないんだ」

 

そう言うとやっと諦めたように商品を置く。

 

「そうか、わかった。ところで、これからどこ行くの?」

 

あまり決めていないけれど、ピンクモスクかアリーエブネハムゼ聖廟に行こうと思う、と答える。

そうか、と頷き少し間を置いて彼が言う。

 

「よかったら、妻と一緒にランチをしない?妻は外国人にとても興味があって、英語の練習をしているんだ。娘たちは外出していないけれど」

 

魅力的な提案だった。

他人に妻や娘の写真を自慢気に見せるくらい仲の良いイラン人の家庭。

お邪魔したい、と思った。その日会った人に付いて行くのは何度目だろう。

イランにおいてそれは全く危険な行為ではないように思えてしまっていた。

 

わかった、ありがとうと言って言われるがままに彼のオンボロの車に乗り込んだ。

 

緊張感がなさすぎると言われれば、そうだったとしか言えない。

レイプ寸前 

途中でピザを買い部屋で食べよう、と言う。そこでも彼は「君はゲストだから」と言い頑なにお金を受け取らなかった。

10分ほど走った車が停車したのは、とても大きなマンションだった。

ここで待ってて、と言い残し彼はひとりでエントランスに入ってゆく。

ものすごく豪邸じゃないか、と思った。立派な門に自動ドア。シーラーズではあまり見ないような近代的で清潔な建物だった。

 

1分ほどすると彼はすぐに車に戻り私を呼ぶ。

招かれるままにエントランスに入って気づく。

あれ、ここ、マンション?

 

自動ドアを抜けてすぐにある、立派なカウンターにはReceptionとの文字がある。英語表記だ。

マンションじゃなくて、ホテルと言われた方がしっくりくる。

 

変だ、と思いながら彼に背中を押され階段を上がる。

私の後ろに彼が続き、その後ろに従業員と思われるひとりの女性が彼を早足で追いかける。

彼女は彼に怒ったように何か言っている。ペルシャ語だ。

彼はそれを無視するように押し込むように私を部屋に入れる。

待ってて、と言い残しバタンと強くドアを閉めてしまう。

 

部屋に入って確信した。

きちんとメイキングされたベッドに内線電話、ベッドに畳まれたバスタオル。

ここはマンションじゃない。ホテルだ。連れ込まれたのだ。

 

外国で男の人にホテルに連れ込まれている。

その事実に気が付いても、不思議と恐怖はあまりなかった。

彼の運転するときの震えた手や、ガラケーを覗くときにメガネを上にあげる仕草を見て、年齢は聞いていないけれど、70代以上だろうと思っていた。

例えば私が走れば追いかけられないだろうし、殴れば倒れそうなほど弱々しい老爺だった。

呑気なもので、笑い話になるだろうな、とぼんやり思った。

ただ、その日に会った外国人女をホテルに招く70代がいるという気持ち悪さにゾッとした。

 

ホテルだと知った私は彼を待つわけもなく、部屋を出る。

彼はまだ従業員の女性と言い合いしていた。

部屋を出た私に気が付いた彼女が手招きをする。なにやらペルシャ語で優しい声で話しかけてくれるが、全く理解できない。

彼を指差し、He,Bad,No,といくつか単語を発し、帰りなさい、と言ってくれているようだった。

わけがわからない外国人の子供のような私を彼がホテルに連れ込もうとしているのを見て、静止してくれているようだった。

ありがたい。

 

彼女に本当にありがとう、と言い外に出る。

ここがどこだかわからない。GoogleMapを開くも、ホテルの場所がわからない。

気が抜けすぎている自分に驚く。

 

あてもなくとりあえず歩こうとすると、後ろからクラクションが鳴る。

老爺だった。車に手招きをする。後ろにはさっきの従業員の女性がいる。彼女も手招きをしているようだった。素直に近づく。

 

しょんぼりとした様子の老爺が車の窓を開けて話す。

「今日家に奥さんいなくてさ...今日は帰りなよ。アリーエブネハムゼ聖廟に行くんでしょ、送って行くよ。ごめんね」

 

まだあそこを家だと言うのか。笑ってしまった。

「いい、やめて。ひとりで行くよ」

 

不満気な顔をする老爺。

私が歩こうとすると、今度は従業員の女性が大声で私を呼び止めた。

 

「Where?」

 

GoogleMapを開き、彼女に聖廟を見せる。

OK、と言い強い命令口調で車の中の老爺に何か言う。

わかった、わかったと言うように頭をポリポリ掻く老爺。

なぜだかわからないけれど、圧倒的な権力をこの女性が持っているように見えた。女性が男性に強い口調で物言いするのは、イランではかなり珍しい光景だ。

 

話が付いたようで、彼女が私に老爺の車に乗るよう勧める。

え?状況がわかってるのにこの人の車に乗ってと言っているのか?

本当に大丈夫?OK?と何度も聞く私に、にっこり笑って頷く彼女。

 

後ろでクラクションが鳴る。車が詰まっているようだった。

早く出ろ、というようにシッシ、と彼女が手を降る。

全く意味がわからないが、仕方がなく後部座席に乗り込む。

 

「ごめんね、聖廟まで送るわ」

 

機嫌を損ねたのか、それだけ言い老爺は車を動かした。

マップを開き、聖廟にきちんと近づいていることを確認する。

車中はさっきと打って変わって何の会話もなかった。

なんで送ってくれるんだろう。優しいには優しいのか。

わからないけれど、さすがに怖い。どこか歩道沿いで止まったら逃げよう、と思った。

 

地図を見ているとどんどん聖廟に近づいている。

はい、ここだよ、と言われて車が止まったのは確かにアリーエブネハムゼ聖廟の目の前だった。

 

ありがとう、と言って車を降りようとすると、買ったピザとコーラを渡してくれる。俺食べないから、と言う。じゃあ貰うね、と答えそれを受け取り車を降りる。

彼はちょっと、と言い私を呼び止める。なにやら言いたそうだ。

車の中の彼は、左手の人差し指と親指をくっつけて丸の字を描き、右手の人差し指でその穴に出し入れする。

「ディグディグ」と言いニターと笑い、これ、しようねと言う。

明日、また俺のお店に来てね。約束だよ。

 

鳥肌が止まらない。

適当に頷いて車から離れる。彼は満足気に去って行った。

私が明日本当に訪れると思っているのか。驚きだ。

 

本気を出せばこの老人からなら逃げられるし倒せると思ったけれど、もしこれが若い男で口のうまい人だったら危なかったな、と思う。

そこまで判断して付いて行ったのか?そうではない気がする。

イラン人があまりに親切で、危険な目に全くあっていなかったから気が緩んでいたとしか言いようがない。

 

どうやって旅を続けよう。やっぱり知らない人に付いていかない方がいいのかな。

廟の前の広場でボーッとピザを食べながら考える。

 

テヘランで会った家に泊めてくれた人やガイドをしてご馳走してくれた人、昨日の親切な無料ガイドを思い出す。

少し危ない例が1つできたけれど、信じられないほどのもてなしを受けた例がいくつもあるのだ。

 

パサパサのピザを飲み込み、あまり深く考えないことだけを、決めた。

これまで通り楽しそうなことはやってみるし、付いていきたいと思えば付いて行こう。

 

この日は長くなりそうなので、2つに分けます。

続きはこちらから。

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この日の発見

老爺にも性欲がある

 

 読んでいただき、ありがとうございました。