ユカログ

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25歳・Travel Writer

【女一人】イラン1ヶ月の旅・テヘラン編④【旅行記】

こんにちは、ユカです。

 

 女一人でのイラン旅行記テヘラン編その4です。

 

その3はこちらから。

www.syukalog.com

 

 

目次

2016.2.15 テヘラン後編

ホメイニー廟 泣き叫ぶ女たち

メトロを降りると駅のすぐそばにホメイニー廟はあった。

地球の歩き方では、廟内はイスラム教徒でないと入れない、と書いていた(気がする)*1

 

異教徒の私は外から見るだけ。それでもきれいだな。外も公園のようになっていてのどかな雰囲気だ。来てみてよかった...なんて思いながら写真を撮っていると、ずっと前の方を歩くAltinがこっちこっち!と言い手招きをする。

 

なんだろうと思い彼の後ろを歩いて行くと大きいドームへ辿り着いた。ホメイニ師が眠る廟がある建物のようだ。

入り口らしきゲートに辿り着く。薄暗く埃っぽい。分厚い布のカーテンがかかっている。警備員のような人がちらりとこちらを見るが、無表情のままだ。

Altinはさらに歩き進める。もしかして、入れるのかな。ワクワクしながら彼の後ろをついて歩く。

廊下を歩くと、またカーテンが2つ現れる。男女分かれているようで、僕こっち、君あっち!あとで合流ね!じゃあね!と言いウインクをしてAltinは親指を立てる。

 

「え、待って待って!イスラム教徒じゃないと入れないってガイドブックに書いてたよ、大丈夫?」

 

少し前まで彼のことを疑いながら邪険に適当にあしらっていたのに、一人にされると急に不安になる私。なんだかちょっとずるい気がする。

 

えーそうなの?と言い、彼は頭をポリポリ掻きながらカーテンの奥にいたセキュリティチェックの女性に何やらペルシャ語で話しかける。女性はすぐににっこり笑って私に向かって手招きをする。

 

彼女の元に向かうと、身体を簡単に触られた。ボディチェック係のようだ。チェックが終わると、分厚い黒い布を渡してくれた。これ、羽織ってから中に入ってね。チャドルだ。

 

あっさりと入れてしまった。いいのかな、と思いながら中に進む。

広く天井の高い、体育館のような空間に出る。床にはフカフカの絨毯が敷き詰められている。真ん中に黄緑に輝く大きな箱がある。あれがホメイニ師が眠っている廟だ。

 

不思議な光景だった。

 

祈りの言葉のようなものを呟きながら廟の周りをゆっくり歩く男、無言で廟を見つめる青年、走り回る子供、叱る母親...。

そして印象的だったのが、真っ黒なチャドルを被った女性が3,4人、バラバラに跪き廟に向かって嗚咽を漏らしながら泣いていた。たった今息を引き取った人を目の前にしたような泣き方だった。

 

どんな感情なんだろう。悲しみなのか、感謝なのか、祈りなのか。私には、かつての指導者を想って泣いているんだなということしかわからなかった。

 

宗教心ってあんまりわからないな、と思う。あれ?そもそも宗教なのかな。ホメイニ師は人間だ。日本で言うと誰なんだろう、天皇天皇が死んだら泣くだろうか。私は、少なくとも今は、嗚咽を漏らして泣くことはなさそうだな。

 

あれこれウンウン考えていると、後ろからAltinの声がした。

 

「おーい、写真撮ろうよ!!」

 

底抜けに明るい声で彼は言った。

 

どう考えても写真を撮る雰囲気ではない。不謹慎すぎる。いや写真は大丈夫...と答えかけたその時には、近くを通った礼拝者に彼のスマホを渡していた。この子ね、日本から来た僕のフレンド。写真撮ってくれる?...頼まれた礼拝者も、特に嫌な顔をすることもなくカメラをこちらに向け構えている。

 

さすがだ。嬉しそうにピースサインを作る彼。もっと笑って!と言う。ジャンプする?せーの、と続ける。ジャンプはしない、と答えながらも彼の陽気さに笑ってしまう。

 

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ピースサインも遠慮した

 

見知らぬ陽気な男2人とディナー

どう?楽しかった?

写真を撮るとすぐに、もう出ようよお腹空いた、と言うAltinに従って廟を後にした。彼は廟内で祈ることも泣くこともしなかった。彼にとってはここはただの観光地のひとつのようだった。

 

「うん、楽しかった。本当にありがとう」

私は心からそう言った。彼がいなかったら内部まではきっと入れなかった。

 

そうかそうかそれはよかった、と言うように満足気に頷く彼。

 

不思議な人だなあ。この人って落ち込むこととかあるんだろうか。悩んだりもしなそうだなあ。

...そもそも本当にただのいい人なのかな。帰り際になってお金寄越せとか言う男に豹変したら嫌だなあ。

 

メトロへと歩く道のりで、ちょっと電話、と言いAltinが誰かに電話をかける。電波が悪いのか「ここで待ってて」というジェスチャーをしてどこかへ歩いて行ってしまった。

お金を請求されるならこのタイミングだし、逃げるなら人目が多い今だと思った。

けれど、なんとなく彼に心を開いた私は黙って電話を待つことにした。いい経験できたし、少しだったらお金払ってもいいな。

 

すぐに電話を終えた彼は戻ってきて、楽しそうに言う。

「今ね、僕の友達呼んだから!一緒にご飯を食べよう。テヘランで一番美味しいところに連れて行くよ。彼ね、リッチだから奢ってくれると思う」

 

ええ...。お金請求するんじゃないの...。

そして、俺が奢るよ!じゃなくて、俺の友達が払うよ!と宣言するAltin。なんとも彼らしい。

 

なんだかおかしくなって、もう少し彼と喋っていたい気持ちになった。

暗くなる前に帰ること、細い路地には入らないこと、車には乗らないことを心の中で決めて、一緒に夕食に連れて行ってもらうことにした。

 

メトロを乗り継いでレストランに着く。

Azari Traditional Tea Houseというお店。*2

 

彼の友人だという大きな男が店の前に立っていた。こちらに向けて笑顔で手を振る。Aminと名乗ってくれた彼は青いポロシャツにスポーツ刈り。誠実、と顔に書いてあるような優しい顔をしている。

 

初めまして、と言い握手する。2人の見知らぬイラン人の後をついてレストランに入る。部屋で寝てるだけだったら味わえなかったワクワクだ。楽しい。

 

観光客向けのレストランなのか、店にはたくさんの民族衣装や楽器が飾られていた。奥のスペースでは太鼓や弦楽器を使って音楽が奏でられていた。シーシャを吸っている人も多い。

 

私のためにわざわざここまで連れて来てくれたんだろうな、と思ったら、すごく嬉しくなった。私1人じゃこんなところに入れない。ディナー代、出したいなと思った。

 

フワフワの絨毯の上にあぐらをかいて座る。テーブルはなく、床に料理を置くようだ。Altinが料理を注文してトイレに立つと、Aminは聞いた。

「大丈夫?彼、強引じゃなかった?いい奴なんだけど。嫌な思いしていない?」

 

すごい。Altin傷つけない言い方で、私の心配をしてくれる。本当に彼と仲がいいのだろう。見た目のまんま、とても優しそうだ。

 

「うん。めちゃくちゃ強引だった。びっくりしたけど、いい人だと思う 。正直でおもしろい」

 

私が答えると、Aminは心底安心したように、よかった、と言い笑った。

 

エンジニアの仕事をしているというAminは、ものすごく頭の回転が早かった。流暢な英語で、日本について、私が訪れた国についてあらゆることに興味津々という感じで多くの質問を投げかける。政治、宗教、観光地、文化、科学...どんな話題についても知識があって、真剣な目で話を聞いてくれる。

Altinは話に入ったり入らなかったりあくびをしたり。飽きると隣の客に話しかけたりしていた。

 

日本の労働環境はどうだとか話しているうちに、料理が運ばれてくる。

ペラペラのナンが最初に到着した。その周りにパサパサのケバブ、酸っぱい香辛料、もっと酸っぱいヨーグルト、味のしない野菜が綺麗に並べられる。それらを適当にナンに乗せ口へ運ぶ。

見栄えはとてもいい。だけれども、見事にどれも美味しくない。

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とても刺激的な味のイラン料理

 

3時間ほど店にいた。あまり食は進まなかったけれど、Aminの話の上手さ、Altinの作る気張らない雰囲気のおかげであっという間に時間が過ぎた。

 

そろそろ出ようか、お手洗い大丈夫?あっちだよ、と聞くAmin。どこまでも気遣いができる人。モテるんだろうなあと思った。

トイレを済ませ、席に戻るとAminがお会計をしていた。そんな予感はしていたけれど、なんてスマートなんだろう。

でも完璧すぎるエスコートにうっとりしてもいられない。私はAminの彼女でもなければデート相手でもない、たった3時間前にはじめて出会った外国人だ。観光客向けのレストランだ、代金も安くもないはずだ。

 

私が払うよ、と慌てて言うとAminは優しく笑って手で制す。

「君はお客さんでしょ。日本からの旅費もかかってるんだから、いいんだよ」

 

なんて素敵な言い回しだろう。うっかり涙が出そうになった。でも、甘えっぱなしだ。少しでも払おう、そう思い財布を取り出す。

 

それを見た、今度はAltinがすかさず言う。

「いーてっば!彼リッチだから」

さすがだ。そう言うAltinは財布を出す素振りは全くなく、彼もAminに奢ってもらう気満々のようだ。あっけらかんと笑っている。

 

そうそう、とAminは頷き、代わりに日本に行ったらご馳走してよ、と言う。優しいなあ。さっき、イラン人が日本に観光に行くのはビザ取るのが難しいって話してたばっかりなのに。

 

結局タクシーに3人で乗り込み、ホテルまで送ってもらう。

知らない人に付いていかない、タクシーに乗らない、細い路地を通らない、暗くなる前に帰る、全てのマイルールを破ってしまった。けれど罪悪感は1mmもない。

 

もう彼らを疑う気持ちは全くなく、ホテルの前で握手する。

彼らは結局、最後まで本当に親切な親日のイラン人だった。

 

「本当に、本当にありがとう。日本に来たら案内するね。また会おうね」

 

旅行中にこの言葉を使うたび切なくなる。薄っぺらい言葉だ。1日一緒に過ごしただけの私たちは、きっともう会うことはない。

 

彼らが乗ったタクシーが見えなくなるまで手を振る。彼らも後ろを向きながら手を振ってくれていた。

 

交換したFacebookの繋がりが切なさを少しだけ消してくれる。いつかもう1回会いに行きたいなぁ。ありがとう。

 

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ありがとう

 

この日の発見

よく知らないモノには感動できない(宝石・歴史)

直観に従って、人を信じてみてもいいかもしれない

イラン人、優しすぎる 

 

 読んでいただき、ありがとうございました。

  

*1:2016年版。手元にないためもしかしたら勘違いかも

*2:今TripAdviserで見てみるとテヘランで21位とあった。いいとこ!